クラタリング

2021年7月7日

クラタリングってなに? 吃音と、ちがうの?

たぶん吃音だよねと思っていても、次のような症状があれば、もしかしたら、「クラタリング」かもしれません。

 
 

早すぎて何を言いたいのかわからないよ。もっとゆっくり話して

と人に言われる。

 
 

えーと、食べたい、えー、お昼に、食べ、カレーライス、今日、えーと、今日はお昼ご飯にカレーを食べたいです

など、言葉の順序がバラバラだったり、繰り返しや言い直しが多かったりする。

執筆:Kenneth O. St. Louis ( ウェストバージニア大学名誉教授 )
宮本昌子 飯村大智 深澤菜月 平野昌美 訳・監修
アメリカ吃音財団作成 www.StutteringHelp.org https://www.tartamudez.org/

 

■クラタリングの特徴

クラタリングは、吃音と同じような発話流暢性の障害ですが、吃音と同じでは ありません。
クラタリングには、速すぎて、不明瞭で、めちゃくちゃに聞こえる発話があります。 聞いている人は、急いで慌てて、話したいことをまとめずに話し出して、言っていることがめちゃくちゃで、いったい何を言いたいのかわからないという話を聞くことになります。
それとは対照的に、吃音の人はたいがい、自分が言いたいことはわかっていますが、一時的に言葉が出ないことがあります。

クラタリングには、以下のような特徴がみられます。

・音の一部を省略して発音してしまう (「ありがとうございました」→「ありとうざいました」、 「いかなかったです」→「いかったです」など)
・「えーと、えーと、えーと…」などの間投詞や、言葉の言い直しが、 通常よりも多い
・単語の途中で途切れるので、別の意味の言葉に聞こえることがよくある
・言葉がたどたどしい
・早口すぎる

これらは、クラタリングの本質的な特徴です。

以下の症状は、クラタリングの人に現れる場合と現れない場合があります。

・紛らわしい、まとまりのないことを発言する
・自分の発話のたどたどしさや、早口すぎることについて自覚していない
・「ゆっくり話して」「注意を向けて話して」と言われれば、一時的に症状が改善する
・血縁の人の中に、吃音かクラタリングの人が数人いる
・クラタリングの症状に起因する社会性、または、職業上の問題が生じている
・学習障害がある
・手書きの文字が乱雑である
・注意散漫、多動である、あるいは集中力が続かない
・聴覚による認知が苦手である
・話をするときに、身体のもがきはほとんどない

 

■クラタリングの診断

クラタリングであるのかどうか、正確に診断してもらうことが必要です。 診断してもらうには、言語聴覚士に相談することをお勧めします。
評価プロセスには、クラタリングがあるかどうかを判断すること、 他のコミュニケーションの問題と区別をすること、発話の困難さを生じる他の診断と区別することが含まれます。
クラタリングの診断に加えて、これらの他の問題の診断は、学級担任の先生、 特別支援学級や通級指導教室の先生、または心理学などの他の専門家からの協力や意見を必要とする場合があります。
クラタリングの評価には、流暢さの問題だけでなく、発話運動、言語、 学習、社会性の問題についても考える必要があります。
さらに、吃音、言語発達障害、学習障害のような他の問題があるのかどうかについても具体的に教えてもらう必要があるでしょう。
吃音のある人にクラタリングがある場合、吃音が軽減するまでクラタリング は気づかれにくいということもしっかり心にとめて置くことが大切です。

■クラタリングの治療

クラタリングの治療には、以下のような方法があります。

・最初の目標は、ゆっくり話すことに意識を向けること
・頭の中で処理できる程度にゆっくりした話し方にするためには、発話の自然な部分で区切る練習がある。言葉の区切りを意図的に入れると、ゆっくりした話し方になる。
・誰かに話すときには、「いつ、どこで、誰が、何をした」という構文にあてはめて、伝えたいことを準備する習慣をつける
・一番伝えたい言葉は、丁寧に、抑揚をつけ、強調して話すようにする
・自分の話し方に常に注意を払って、言葉の区切りや順番、しゃべる速さなどが人に伝わりやすいように、練習を続ける

クラタリングの治療効果

クラタリングの多くの人は、最初は、本当に治療の効果があるのかどうか、 疑うかもしれません。
しかし、年齢に関係なく、自分の話し方に耳を傾け、常に観察し続けるという方法が、自分の話し方の改善に役に立っているということにだんだん気が付くようになります。
ほとんどのクラタリングの症状は、発話速度の調整で改善することができます。また、クラタリングを改善することに成功した人が、コミュニケーションの取り方に問題が無くなって仕事がうまくいったり、子どもたちが学校で明るくイキイキと過ごせるようになったり、可能性がどんどん広がるという経験を聞くことがあります。このような話は、クラタリングのある人にとって自分自身の変化に向けて懸命に取り組む十分なモチベーションになります。
治療のための練習の多さや、話し方に注意を払い続けることには 多くの努力が必要ですが、私たちはそれを支援する多くの方法を提供することができます。
クラタリングについてもっと知りたい場合、 言語聴覚士に相談したい場合は、下の情報を参考にしてください。

<翻訳書> クラタリング(早口言語症)特徴・診断・治療の最新知見,学苑社,森浩一・宮本昌子監訳,2018 

<学齢期用チェックリストのダウンロード> 筑波大学人間系(障害科学域)宮本昌子研究室のホームページ[吃音とクラタリング] https://miyamoto-lab.net/page-30/

<宮本昌子研究室のメールアドレス> smymt<at>human.tsukuba.ac.jp(<at>を@に変えてください)

<宮本昌子研究室のホームページ> https://miyamoto-lab.net/

 

Posted by miyamoto-lab