筑波大吃音会ーツクスター 第1期活動報告

ツクスタは半年の活動を終了しました。皆様ご参加いただきありがとうございました!

①吃音・流暢性研究会(勉強会)

月に1回,計5回の会を開催しました。会の主な内容は,吃音の基礎的に知識に関する講義形式の勉強会と,架空の事例について支援や関わりを考えるディスカッションです。全てオンラインで実施し,計104名の参加者の方にご参加いただきました。

②吃音セルフヘルプ・グループ

月に1回,計6回の会を開催しました。会では,悩みや情報の共有・カードゲームなどのレクリエーションを用いた交流会,マインドフルネスの体験などの活動を行いました。全6回のうち3回は対面・オンラインのハイブリッド形式,6回のうち3回はオンライン形式で行いました。計56名の参加者の方に参加いただきました。

このような筑波大学を拠点とした吃音に関する勉強会やセルフヘルプ・グループを実施することは初めての試みでしたが,2つの活動を通して合計150名の方にご参加いただくことができました。特に多くの方にリピート参加していただくことができ,また,会実施後に行う匿名の会の満足度アンケートでも高評価をいただくことができました。

勉強会では,宮本昌子先生や宮本研究室のゼミ生が参加されていたことで会の専門性が大幅に上がり,普段あまり触れることのない最新の知見を踏まえながら勉強会をすることができたと考えています。また,吃音セルフヘルプ・グループでは,会の参加に際する配慮やルールを明確に定めたことで安心して交流できる環境づくりに努められたと考えています。

また,この会の活動は吃音啓発の効果があったのではないかと考えます。この会の広報は主にSNS(Twitter)を利用した広報活動を行っていましたが,Twitterアカウントのフォロワーは1800人を超え,会の紹介ツイートは50リツイート,150を超えるいいねをいただきました。また,これをきっかけにつくば市のローカルラジオ局「つくばラヂオ」の番組に出演させていただいたり,その他にもメディアの出演依頼を複数いただいています。このように,会の実施のみではなく,会の存在や活動そのものが吃音の啓発に一定の効果を見出したと考えています。

今後は第2期として,継続して活動を進めていく予定です。会の内容や運営を工夫し,さらに会が盛り上がるよう努めて参りますので,今後もぜひご参加ください。

 

参加者の方の感想

大学3年 MKさん

 〇ツクスタを知ったきっかけ

  私も、吃音があり辛い経験を何度もしてきました。これまでは、“吃音=恥ずかしいこと・ダメなこと”とレッテル貼りをして、吃音について向き合うことなく過ごしてきました。しかし、これから社会人として働くにあたって、電話対応や接客など様々な場面で吃音の壁に当たるときがくると思います。今年に入り、自分の吃音について向き合い始めたとき、Twitterを通じて「ツクスタ」を知りました。勉強会,セルフヘルプ・グループの3回目から、他大学の学生でありながら、ツクスタの運営に参加させていただくことになりました。また、セルフヘルプ・グループの一部司会進行をするなど貴重な体験をすることができました。ここで、改めて宮本昌子先生や会の運営でお世話になっている方々、これまで勉強会やセルフヘルプ・グループに参加された方々に、厚く感謝申し上げます。

 〇学外参加者として感じたこと

  これまでの自助グループでは、地域ごとの集まりが主流であり、日本全国の吃音当事者や吃音に興味を持っている方々が集うことはできませんでした。しかし、ツクスタではZoomを介して行うため、誰でも気軽に参加することができます。実際に、勉強会やセルフヘルプ・グループでは全国から様々な経歴を持った方々が参加しています。グループディスカッションでは、それぞれの知見・知識から討論を行うので、大変勉強になりました。なぜなら、勉強会に参加されている方々は、必ずしも吃音を持っているとは限らないからです。1つの事例に関して、吃音当事者としての意見・吃音非当事者としての意見両方とも聞くことができました。様々な視点から考察することによって、自分の考えがさらに深まったと思います。しかし、克服するべき課題はまだまだあります。例えば、Zoomで行っているため、インターネット回線トラブルや会話が一方通行になってしまい、円滑なコミュニケーションができないこと、SHGの開催目的をより明確することなどが挙げられます。後者に関して、本来自助グループの活動目的は、同じ吃音をもった人同士が励まし合いながら問題解決や克服を図っていることだと考えます。私は、セルフヘルプ・グループの司会進行を2回やりましたが、いずれも当事者同士で悩みの共有をする機会が少なかったと反省しています。これから、ツクスタがますます発展・進展していくためには、セルフヘルプ・グループのみならず勉強会を開催することの意義・目的を再考していく時期に来ていると考えています。

 〇勉強会で、吃音体験談をしたことについて

  私は、5月の勉強会において吃音の当事者体験についてお話させていただきました。吃音の症状や体験を人前で話すことは容易ではありません。なぜなら、それは大変辛い経験であり、ある意味捨てたい過去であるからです。正直、死にたいと思ったことは何度もあります。しかし、こうして吃音体験談をするに至ったことには、いくつか理由があります。

1つ目は、吃音について少しでも理解を広げるためです。以前、テレビの特集で失語症の当事者が自身の症状や経験について話していました。私自身、恥ずかしながら失語症については全く知りませんでした。しかし、そうした障害を乗り越えて、失語症について、一生懸命講演している姿に、感動しました。それと同時に、自分なら吃音について、講演できるのではないかと考えたのです。吃音の当事者体験を話すことは、非常に意義あることだと思ったからです。

2つ目は、自分の過去について向き合うためです。私は、高校3年生のときに非常に苦しい経験をしました。それ以降も、思ったようにコミュニケーションをとることができずに、一人悩みを抱えていました。しかし、知人に自分の吃音について、初めて打ち明けたら、「これまで、頑張ってきたんだね」と言われたのです。これまでは、吃音のある自分を否定し続けてきました。しかし、その一言で初めて吃音を受け入れることができたのです。今回の吃音体験談も過去の自分と向き合うためのとても良い貴重な時間になりました。

話を勉強会に戻します。講演中、言葉に詰まってしまう場面が多々ありましたが、最後まで自分の経験や思いを伝えることができたと思います。そして、参加者からも「非常に勉強になりました」「他にも聞きたいです」という言葉を頂きました。“どんなにどもったり、言葉に詰まったりしても、自分の思いや考えは一生懸命に話せば、必ず相手に伝わるもの”だと感じました。また、社会の認知度が低いからこそ、当事者が発信していくことが重要になるのではないかと考えています。そのためには、まずは自分の吃音を受け入れることが最も大切になります。吃音は、決して悪いことではありません。吃音に対する社会の理解・認知を今後より深めていき、より過ごしやすい環境を作っていく必要があるでしょう。

Posted by miyamoto-lab