場面緘黙支援入門: 幼稚園や学校で話せない子どものための
場面緘黙支援入門: 幼稚園や学校で話せない子どものための 単行本 – 2022/2/3
園山 繁樹 (著)
筑波大学名誉教授 園山先生の書かれた本です。
まず、タイトルにもあるとおり、幼稚園や学校で話すことができない子どもたちが存在することを、幼稚園や学校の先生たち、そして子どもたちの家族に、「緘黙」ということを理解していただくための一冊です。
まず、先生方にぜひ読んでいただきたい。
家庭では普通に話せるのに、幼稚園や学校に行くと、しゃべれない、表情が固まってしまう、身動きが取れなくなってしまうという子どもたちは、周囲の大人たちに気がつかれにくいのです。
家族は、家の中では普通に話しているので、まさか、幼稚園や学校に行くと話すことができなくなっているとは、思ってもみません。
また、幼稚園や学校の先生たちは、「この子はきっと、家でもあまりしゃべらず、表情も乏しい、おとなしい子どもなんだろう」と思っているので、まさか、家に帰ると活発にしゃべって、活動的になっているとは夢にも思いません。
ですから、家族も、先生方も、この子が緘黙だと気がつきにくいという現象が起きてしまいます。
これまでの研究の統計では、緘黙は、多くて100人に1人、少なくて1万人に3人ほどという数字が出ていますが、もしかしたら、気がつかれないだけで、もっとたくさんの緘黙の子どもたちがいるのかもしれません。
この本の中では、「場面緘黙」とは、いったいどういうものなのか、緘黙の現状を把握することが、どれだけ大事なのか、そして、緘黙だとわかったら、先生たちと家族がやるべきこと、すぐに取り掛かるべきことについても、教えてくれています。
そして、話せるようになるための取り組みは、「スモール・スモール・スモール・ステップ」
この言葉の意味と、「スモール・スモール・スモール・ステップ」のやり方については、ぜひ、本書をお読みください。
繰り返しますが、
この本を読んでいただきたいのは、特別支援学校の先生ではなく、
普通の幼稚園や、普通の学校の先生方です。
緘黙の子どもたちは、気がつかないところに隠れています。
本書を読んで、ぜひ、見つけ出してあげてほしいと思います。
なお、たくさんの文字を読むのはちょっと苦手…という皆さんのためには、園山先生が本書の中でも紹介してくださっている本をご紹介します。
かんもくって 何なの!?: しゃべれない日々を脱け出た私 単行本 – 2017/5/10
モリナガ アメ (著), 加藤 哲文
話せない私研究: 大人になってわかった場面緘黙との付き合い方 単行本 – 2020/11/20
高木 潤野 モリナガ アメ (著)
私はかんもくガール: しゃべりたいのにしゃべれない 場面緘黙症のなんかおかしな日常 単行本 – 2015/2/3
らせん ゆむ (著)
かんもくの声 単行本(ソフトカバー) – 2020/2/10
入江紗代 (著)
ディスカッション
コメント一覧
本日初めて吃音・流暢性研究会に参加しました。
熱心な温かい雰囲気の会で一緒に勉強させて頂きとても良かったと思いました。
場面緘黙症の本のことがありましたので、コメントを記します。
場面緘黙症になる子にはある気質特性があると思います。その気質特性に基づいて介入を行うと場面緘黙症が寛解する可能性がとても高いと思います。
去年はスクールカウンセラーで勤務する小学校で会った場面緘黙症の子3名(低学年全員女の子)が寛解(態度や行動でしかアウトプットしない状態から言葉で他の児童次いで担任次いで他の教諭や学校職員とやり取りする状態へ変化)しています。キンダーカウンセラーで勤務する幼稚園で会った年長さんには治し方を教えていたところ、その子がその通りにしてひと月後の訪問日には他の子と普通にしゃべっていました。場面緘黙症ではなかったのかと教諭に尋ねたところ、話すようになったんですよ、とのことでした。
ただ、治し方は他の本を読んでないのでどう位置づけられるか分かりませんが、同性の同じ気質の子と仲良くなる、介入する側からすると同性の同じ気質の子と班や係りや席を近くにして見守るです。幼稚園の子には「君はおうちでは普通に元気に話が出来るけど幼稚園とか習い事のクラスに入るとなぜか分からないけど声が出せなくて話が出来なくなるんでしょう。それを場面緘黙って言うんだけどね、あそこにいる○○君は君と気が合うと思うから○○君と仲良しになったら話せるようになると思うよ」でした。同じやり方を高学年や中学生、高校生、大学生の場面緘黙症のクライアントにも適用して成果を上げています。
低年齢で介入すると短い期間で寛解する印象です。
寛解の契機となった同性の同じ気質の子と寛解して間もない頃にクラス替えや進学で離れてしまうと場面緘黙に戻ってしまいますが。同性の同じ気質の子と複数つながってからだと寛解状態は維持するようです。ひとつの介入法だと思います。